KeiYamamotoの雑記

考えたことや見て聴いたことを綴ります

金川真弓『リサイタル』

金川真弓のデビューCDを聴く(OVCL-00802)。通販で頼んでいたが、一向に届かないのでタワレコに出向いて買ってきたCDの中の一枚。金川とグァレーラによる名品の数々が収録されている。

一曲目のバッハから驚きを隠せない。金川は迷いなく一本の芯が通っているように演奏する。それにより強い説得力を持って聴く者に語りかけることに成功している。

18世紀音楽から20世紀音楽へと遷移して武満。和声は大幅に複雑化しているが、グァレーラのピアノはそのような困難を感じさせないほど、音の響きはスッキリしている。その空気感を引き継いでドビュッシーに移行するが、金川のヴァイオリンは明晰にフレーズを処理し、スタッカート一つすら音を豊かに立ち上げる。

19世紀頭に戻ってベートーヴェン。正攻法と言いたくなるくらい力強く、時に優しい演奏だが、慣例に依拠するような曖昧さは一切なく、精巧に積み上げているのがわかる。

18世紀から20世紀まで向かい、19世紀末と頭でバランスを取るのは、標準的なヴァイオリンのレパートリーとしては当たり前すぎるかもしれない。しかしあえてこの難しい選択をしているのを賞賛したい。音楽のあり方そのものが問われる時代の中で、真正面からクロイツェルに繋がる道を整備してぶつかりに行くのは並大抵の胆力でできることではない。次のCDが楽しみになる一枚であった。