誠に大人なシューマンだった。
前半から内声の際立った音の塊が耳にぶつかってくる。このような音は録音ではなかなか難しい。生演奏の醍醐味だろう。ソリストのソルターニは艶やかな音質で安定した演奏を披露した。アンコール含めて実に格好いい。
後半はどうなるか予測しにくかったが、蓋を開けてみれば期待を上回る出来。第2楽章で弦に細かく指示を出し、エッジの立った演奏をしてみせたと思ったら、第3楽章で木管に全てを委ねたりと、今まで見たことがないエッシェンバッハの音楽造り。今までなら全部、音楽を引っ張って引き倒していたところが、オーケストラに半分くらい任せるようになった。エッシェンバッハも変わってきたのだろう。本日は1stClと1stObが大健闘していた。吉村オーボエ首席の芯のあるまろやかな音はどうやったら出るのだろうか。しかもいつも高いレベルにある。このような奏者がいるかぎり、N響は安泰だろう。
ここまでのシューマンはなかなか聴けない。ヤノフスキも含め、今月のN響は賛否はあるだろう。それでも充実した4月だったのではないだろうか。エッシェンバッハは足元があまりよろしくなさそう。まだまだ元気でいてほしいものだ。