KeiYamamotoの雑記

考えたことや見て聴いたことを綴ります

クック『音楽とはーーニコラス・クックが語る5つの視点』

ニコラス・クック 2022 『音楽とはーーニコラス・クックが語る5つの視点』 福中冬子(訳)東京:音楽之友社

こちらの本を読了。オックスフォード大学出版局から出ている、Very short introductionシリーズからの一冊。体調不良により長いこと本が読めなかったため、かなり時間がかかった。

このシリーズはオックスフォード大学出版局が、各学問分野における入門書を用意するという計画の下に出しているものである。日本においてはこのシリーズから散発的に日本語版が出版されており、今回は『Music』が翻訳されるに至った。本来ならば、一括して版権を買ってきて翻訳すべきだと思うが、残念ながら各分野ごとに1冊ずつ翻訳されているのが現状。

音楽における入門書ではあるが、大学における「入門」の意味合いであり、決して内容は簡単ではない。現代における様々な事象を例に論証するため、読者には多様な視座が要求される。音楽は決して「西洋芸術音楽」だけではないことが自明のものとして扱われるが、「世界音楽」のようなものにも懐疑の目を向けている。

この本において私は「音楽学入門」のような内容を期待していたのだが、実際には音楽全般について語られている。現代社会の音楽における諸問題を考慮するにあたり、必要な題材をクックは提示してくれる。その意味において、この本は最良の音楽入門になるだろう。