マルタ・アルゲリッチが新しいCDをリリースした。ラハフ・シャニ指揮イスラエルフィルとのベートーヴェンとラヴェルの協奏曲。
全体としてアルゲリッチの歯切れの良いピアノが楽しい一枚なのだが、シャニがイスラエルフィルから引き出す明るいサウンドが面白いところでもある。ラヴェルの協奏曲の冒頭、シャニはじっくり計算されたクレッシェンドをかけることにより、これ以上は音が飽和するというラインの寸前まで大きくすることに成功している。これにより聴き応え抜群の演奏効果を生み出している。
アルゲリッチの良さは両曲で違う面が出ているが、ベートーヴェンは形式に沿った演奏ではみ出したりということは無く端正である。一方ラヴェルでは煌びやかな音色で美しく聴かせることに注力している。両者の特性の違いを理解して演奏できる力量は脱帽である。
このような目が覚めるようなCDに出会うと楽しいものだ。