KeiYamamotoの雑記

考えたことや見て聴いたことを綴ります

ソヒエフ/ウィーンフィル

奇を衒わない美しいブラームスは久しぶりである。

ソヒエフ指揮ウィーンフィルが来日。サントリーホールへ足を運んだ。

相変わらずオットー・ビーバ博士の曲目解説は明快で納得のいくもの。実証的ではない逸話等は無視し、述べる必要のあることで最大限書いている。このような姿勢は見習いたいものだ。

前半はベートーヴェン交響曲第4番。勢いはあるが、安定した運びに好感を抱いた。後半はブラームス交響曲第1番。ノーブルなブラームスは久しぶり。派手なことはせず、安定して美しい演奏をしてゆく。安定したバスに支えられながら、上声部が鮮やかに紡いでゆく。ブラームスの目指した「交響的変奏」の理想形を聴いた。しかしながら第4楽章再現部第1主題で意味がわからないミスが発生。第1句で、何処とは言わないが、とあるパートが第2句を間違えて演奏する事態となった。すぐに元に戻ったが、あまりの怠慢に一気に聴く気を無くした。ミスはあったが、コーダに向けて高揚していくのは見事だった。

アンコールはシュトラウスの音楽。ウィーンのリズムを繰り出す暖かで愉快なアンコール。これだけでも聴く価値はある1日だった。

変なことをしないソヒエフの活躍でこのコンサートは実現した。今回の指揮はソヒエフで良かったのではないだろうか。1世代前の指揮者の演奏のような、実に美しい、過ぎ去る良き時代への惜別に相応しい演奏であった。