KeiYamamotoの雑記

考えたことや見て聴いたことを綴ります

沼野雄司 『音楽学への招待』

沼野雄司 2022  『音楽学への招待』  東京:春秋社

「音楽の入門書でおすすめはありませんか?」 これは私が、音楽が専門ではない方々から、幾度となく聞かれたことである。この問いを投げかけられる度に、回答に窮する羽目になった。相手が何を求めているのか、毎度わからない。音楽の歴史なのか、美学なのか、あるいは音楽理論なのか。相手の音楽のバックグラウンドによっても変わる。その度に毎回違う本をおすすめしていたと記憶している。数年前から、単に音楽全般については、ニコラス・クックの『Music』が最適だと、私の中で結論がでているし、今もそう思っている。数年前に日本語訳も出たため、読むのも容易。

閑話休題。上記の書誌情報の本を読了した。沼野による「音楽学入門」が繰り広げられる。この本はまさに「音楽学入門」であり、高校生や、学部1年生が読むべき内容だろう。これから音楽学を学ぶor学びたい人にはうってつけ。筆者も断っているとおり、基本は音楽史学に軸足を置きながら、様々なアプローチを試みている。私は音楽学を学ぶには、何より音楽史学は嫌でもある程度やらなくてはならないと思っている。その意味で、基礎的な修養には丁度良い本だと言える。まあ学部生の私の戯言はどうでもいいのだが。

沼野による多彩な論が楽しめる一冊。あらゆる人におすすめできる本であることは間違いない。最初の問いに対する答えとして、この本の方が、人によっては適切かもしれない。