KeiYamamotoの雑記

考えたことや見て聴いたことを綴ります

シャニ/ロッテルダムフィル

注目の指揮者、ラハフ・シャニがロッテルダムフィルと来日。興味津々でサントリーへ向かった。

前半はメンデルスゾーン《無言歌集》からシャニ編曲の管弦楽版。しかしあまり良い編曲とは思えず、一体何がしたいのかわからない選曲であった。オーケストラの状態の良さは伝わってくる。

諏訪内晶子ソリストに迎えてチャイコフスキー。これには驚かされた。第2主題でオーケストラはこれ以上無いくらい音量を落としたが、響きが失われる寸前で演奏していた。これは指揮者を信頼していなければ出来ない芸当である。これにより、諏訪内も安心して小さな音量で歌うことができる状況が作られていた。緩急自在で熱量高く演奏したことにより、客席は大いに湧いた。

後半がブラームス。こちらにも唸らされた。対向配置の中規模編成で、なおかつ中庸なテンポで演奏していたが、これはまさにブラームスが望んだ演奏環境ではなかったか。よく鳴るコントラバスに支えられて、管楽器の安定したソロが次々に披露されていく。全てが抜群の安定さを保ちながら、コーダまで進んでゆく。シャニとオーケストラは緊密に連携し、一部の隙もなくブラームスの複雑なスコアを音にしていく。ロッテルダムカールスルーエからそんなに遠くないが、それも関係しているのではないかと穿った見方をしてしまうくらい理想的であった。学術的にも、ある意味で「正しい」ブラームスであったように思われる。いつも音楽を聴く時には、時間的旅をしている気分になるが、本日は時間的だけではなく、空間的旅をしている気分になった。

終演後は大盛り上がりであった。オーケストラからこれ程の信頼を寄せられるシャニは只者では無さそうだ。今後とも注目していきたい。