美しいシェエラザードは今でも記憶に残っている。
テミルカーノフ死去の知らせを知った。誠に残念で他ならない。最初にテミルカーノフの演奏を聴いたのは2016年。サンクトペテルブルクフィルとの来日公演を聴いた。シェエラザードを演奏したが、第3楽章の清らかな弦楽合奏の美しさが今でも鮮明に思い出される。文京シビックホールにロシアの空気が充満していた。後半のチャイコフスキー交響曲第6番はあまりに恐ろしい第4楽章であった。凍りついた空気感に恐れ慄き、調子が悪くなってしまったことをよく覚えている。
2度目に聴いたのは2019年。読響に客演した時。チャイコフスキーとブラームスの2つのプログラムを聴いた。ブラームス交響曲第2番の瑞々しい演奏は今でも耳から離れない。
2020年にはサンクトペテルブルクフィルの来日公演が予定されていた。私はチケットを買って楽しみに待っていた。しかしコロナ禍により、来日は取りやめになり、そのままテミルカーノフは引退してしまった。
もしかしたらまたの日があるかと僅かに期待していたが、それも叶わないことが確定した。テミルカーノフに哀悼の意を表すると共に、最大限の感謝を込めて。