KeiYamamotoの雑記

考えたことや見て聴いたことを綴ります

上岡/NJP

上岡のこだわりを感じる時間であった。

久しぶりにNJPのコンサートを聴きに、錦糸町へ向かった。前半はケフェレックのソロでベートーヴェン。ケフェレックの演奏は独特の暖かみがあり、安心して聴いていられる。アンコールを含め、豊かな時間であった。

後半はシューベルト。繰り返しは省き、50分くらいの演奏時間になった。上岡は木管のアンサンブルを前に出しながら、時折奇抜に進めてゆく。第2楽章でそれは顕著だった。D944はいかに木管の響き、特にクラリネットファゴットによって成り立っているかを、上岡は克明に描き出した。D944はリズムの権化でもあるのだが、上岡の時折感じる不思議なフレーズ処理によって、目立つようになる。第4楽章コーダでそれは頂点に達し、C音の連打はオールダウンではなく、普通に上げ下げすることにより、レガート気味になっていた。これにより、それまでの熱狂に不気味さを加味することに成功していた。そして最後の和音をディミヌエンドして終わる。コーダだけでも、何とも言えない後味の苦さを残した。これは決して悪いことではなく、そのような解釈も可能なことを上岡は示したのである。

上岡により、D944の解釈の可能性を見せてもらった気がした。それだけでも、今日は行って良かったと思う。