ブロムシュテットが現在来日中である。昨日今日とN響を指揮し、尋常ならざる名演を披露した。N響に何かが憑依したかのようなエネルギーの発露には心底驚いた。
そんなブロムシュテットであるが、足元にかなり不安が残る。昨年の来日時も危ういと感じたが、今年はコンマスの介助が無いと入退場もできない。指揮もかなり小さくなり、バトンテクニックも明白に衰えている。N響はそれを補うために懸命に演奏したが、年齢には勝てないようだ。それはそうであろう。95歳なのだから。マーラーを指揮しているだけで奇跡である。
そうなると否応無く考えさせられるのが、ブロムシュテットに残された時間である。それは間違いなくもう長くないのであろう。今年がN響との最後の共演になるかもしれない。そうなっても何ら不思議はない段階に来ている。そのため最後の来日のつもりで残り4回のコンサートを聴く予定である。
ブロムシュテットの音楽を永久に聴けなくなる。そう考えただけで涙が込み上げ、寂しさに苛まれる。ブロムシュテットの音楽は私の心の支えであり、その豊かな音楽を聴き続けたい。しかし人間にはいつかその時が来る。それを避けることはできない。それらを乗り越えながら前へ進むしかないのである。
いささか嫌な話になってしまったが、いつ最後のコンサートになってもおかしくない段階まで来ている。それは覚悟しなくてはいけない。ブロムシュテットの演奏が1日でも長く聴けることを願い、ブロムシュテットの健康を祈る。