KeiYamamotoの雑記

考えたことや見て聴いたことを綴ります

コバケン/日フィル、ヴィルサラーゼ

今日の日フィルは凄かった。

小林研一郎が日フィルを指揮した。ヴィルサラーゼがソリストとして登場するので、期待してみなとみらいへ。

今日は年の功がなせる技を聴いてきた。ヴィルサラーゼは強い打鍵ながら、全く尖った音は出てこない。まろやかな高音域と、安定した低音域が程よく混ざり、バランスの良い音を聴かせた。時折リズムが前のめりになったかと思ったら、急に後ろに引っ張ったりと、緩急の差がかなりある。たまにオケと合わないこともあったが、日フィルはコバケンと共に、ソリストに最大限理解を示していた。

後半は田園。ゆったりとしたテンポながら、単なるオールドスタイルではない。コントラバスが適切なタイミングで音を出し、他の弦セクションがリズムをはっきり刻みながら、大きな音楽を作り上げていく。木管がまろやかの極みとしか言いようがない音を出し、暖かく豊かな演奏を実現した。第2楽章の美しさにもはや言葉は無かったが、第5楽章になると、人生に対する壮大な肯定のように、音楽が高らかに響いた。このような演奏を聴くと、生きていること自体が大いなる肯定であると思えてくる。コバケンの年の功と、人柄がなせる妙技であった。

感極まったコバケンによるマイクパフォーマンスの後、アンコールが演奏された。曲はいうまでもなく《ダニー・ボーイ》なのだが、今日は一味違った。ここまで感情に訴えるような弦セクションは久しぶりである。

万雷の拍手で終演。ここ数年の日フィルは熱演が多い。このような演奏が聴けるのが、日フィルの魅力だろう。

山田/モンテカルロ、藤田真央

山田和樹が繰り出す、演奏効果抜群の時間だった。

山田とモンテカルロフィルが来日。藤田真央をソリストに迎えて、巡業していた。本日、みなとみらいホールが最終日。

山田も藤田も、時に大見得を切りながら、劇的に演奏する。それは両者に共通していて、ある意味相性が良いと言える。それでもところどころで見せる、計算されたピアニシモの音量調整が面白い。16型のオーケストラも山田に対して非常に協力的で、良好な関係を築いてきたことがわかる。木管のくぐもった、独特な音色も魅力であった。《オルガン付き》では当然、みなとみらいホールのオルガンも使われたわけだが、オーケストラと協調して、ホール一杯に鳴らしていた。

なかなか見事な演奏会であった。モンテカルロは初めて聴いたオーケストラだが、また聴く機会があれば喜ばしい。

浅草演芸ホール

笑いに満ちた寄席であった。

雨の中、浅草演芸ホールへ。少し空席はあるが、昼の部から大賑わいであった。

昼の部のトリは林家木久扇。落語は無く、思い出話を聞く会になっていた。それでも笑い話は尽きず、和やかな雰囲気で終わった。木久扇にはまだまだ元気でいてほしいものだ。二代目の木久蔵も好調。会場では木久扇ラーメンが販売され、昼の部は木久扇一色であった。そんな中でも相変わらずロケット団の漫才は安心して聞いていられる。

引き続き夜の部。三遊亭白鳥の相変わらずな、破茶滅茶新作落語が傑作。18時まで多彩な出演者が続き、マジックなども面白かった。そして今日一番盛り上がった、春風亭一之輔古今亭文菊が立て続けに登場。二人とも絶好調で、文菊の話の終わり頃には、会場は抱腹絶倒だった。

トリまで居たかったが、体力が持たないのでそこで引き上げてきた。豪華な出演者による5月上席、実に愉快だった。

ふわふわのくま展2024春

ふわふわのくま展が日本橋小津和紙にて開催された。一年ぶりに小津和紙のギャラリーへ。

今回のテーマはデンマーク。カレンダーやネットで見た絵から、新作まで様々並んでいた。目を引くのは食べ物の絵が多いという印象。開場時間から、ギャラリーは沢山の方で賑わっていた。整理券が手に入らなかったので、今回はオーダー色紙はあきらめ、10cmのくまさんとハンカチを購入した。

やはりふわふわのくまを見ていると、和やかな気持ちになる。そんなくまさんを、多様な題材で描く原田先生はすごいという認識を新たにした。

また次回も楽しみにしている。

エッシェンバッハ/N響

誠に大人なシューマンだった。

エッシェンバッハN響に客演。久しぶりに聴きに行った。

前半から内声の際立った音の塊が耳にぶつかってくる。このような音は録音ではなかなか難しい。生演奏の醍醐味だろう。ソリストのソルターニは艶やかな音質で安定した演奏を披露した。アンコール含めて実に格好いい。

後半はどうなるか予測しにくかったが、蓋を開けてみれば期待を上回る出来。第2楽章で弦に細かく指示を出し、エッジの立った演奏をしてみせたと思ったら、第3楽章で木管に全てを委ねたりと、今まで見たことがないエッシェンバッハの音楽造り。今までなら全部、音楽を引っ張って引き倒していたところが、オーケストラに半分くらい任せるようになった。エッシェンバッハも変わってきたのだろう。本日は1stClと1stObが大健闘していた。吉村オーボエ首席の芯のあるまろやかな音はどうやったら出るのだろうか。しかもいつも高いレベルにある。このような奏者がいるかぎり、N響は安泰だろう。

ここまでのシューマンはなかなか聴けない。ヤノフスキも含め、今月のN響は賛否はあるだろう。それでも充実した4月だったのではないだろうか。エッシェンバッハは足元があまりよろしくなさそう。まだまだ元気でいてほしいものだ。

新学期

明日より新学期が始まる。

今年度は卒業論文を書かなくてはならない。ゼミにも参加する。この2つが不安だが、なんとかなるだろう。

今年度も弊学の充実した授業を受けられる。残念ながらアクシデントもあり、思うように履修が組めなかった。私の体調も考慮しなくてはならず、大変だが、なんとかこなしたいところ。

無理のないようにするつもり。

ホーネック/菊池

世紀の狭間で生きた作曲家たちの佳作を、上品な演奏で聴いた。

ライナー・ホーネックと菊池洋子による演奏会。東京文化会館小ホールにて開催。私の東京春音楽祭は、このコンサートにて開幕を迎えた。

前半はモーツァルトシューベルト。両名とも、まろやかで暖かみを感じる音で一貫していた。その中で、18世紀から19世紀に移り変わる時期に、ウィーンで活躍した作曲家の音楽語法が展開された。

後半はコルンゴルトブラームス。こちらも同じ音質で演奏された。コルンゴルトによる重工業の匂いがする音楽と、ブラームスの艶やかな音楽が奏でられる。19世紀から20世紀の転換点で、ウィーンを生きた作曲家の足跡を辿ることになった。

拍手に応えて、アンコールという名の第3部が始まった。クライスラーの作編曲が次々と繰り出されてゆく。ある意味コルンゴルトブラームスの橋渡しと言えるだろうか。途中でシューベルトを挟んだりと、洒落た趣向に会場は大盛り上がりであった。

本日一番の出来はコルンゴルトだろう。こんなにコルンゴルトが楽しいとは思わなかった。そのような発見があるコンサートであった。

東京春音楽祭は始まったばかりだが、毎年新たな発見があり、面白い。今年はどんな展開があるだろうか。期待している。