ブロムシュテットはウィーンフィルとの付き合いを始めてから11年ほどである。2011年にアーノンクールの代役で共演して以降、ツアーに帯同するなど緊密な連携を保っている。昨年も2つのプログラムで夏のヨーロッパを巡り、喝采を浴びた。今年5月もメンデルスゾーンの《讃歌》で名演を披露したのも記憶に新しい。
そんなブロムシュテットとウィーンフィルは一枚だけCDをリリースしている。ウィーンフィルの自主制作盤の2018年エディションがそれである。2017年8月20日のザルツブルク音楽祭におけるブルックナー交響曲第7番の記録だが、これはブロムシュテットのブルックナー演奏の中でトップクラスに美しい。
冒頭の低弦の鳴りはふくよかで、ウィーンフィルの美質が前面に出ている。それ以降も一つひとつの旋律が伸びやかに紡がれる。それでも全体の引き締まった構築はいつものブロムシュテット同様、文句のつけようがない。
全体として常に美しい音を提供し続けるといった趣で、よくある第2楽章を頂点に音楽を組み上げるのとは違う。全体が安定しているため耳触りはじつにソフト。
上記はブロムシュテットとウィーンフィルの他の演奏でも感じられる。ブロムシュテットはウィーンフィルの長所である柔らかで清らかな音をうまく汲み上げ、自身の持ち味である暖かな歌をそこに吹き込んでいる。ブロムシュテットとウィーンフィルの共演は音楽を聴く喜びをまじまじと実感させてくれる。
今後の活動がどうなるかはブロムシュテット次第だが、是非とも一度来日公演をしてほしいと願っている。現状音沙汰が無いブロムシュテットの復帰を祈りたい。